「北欧ゴリ押し」ウォッチ

「北欧を見習え」というチープなゴリ押しにうんざりしていませんか?

ポップグループ ABBA とナチスドイツの人口政策

(初出:ゴリ押し北欧 Watch 2017年5月21日

 

(最強グループ ABBA の女たち・その前とその後 その1)

スウェーデンが生んだ最高のポップグループと言えば、なんと言っても ABBA ですよね。かの有名なダンシング・クイーンは、もう40年前の曲ですが、今でも十分通用するぐらい完成度高いです。

で、今回は ABBA の二人の美女のお話しです。

まず、フリーダ(Anni-Frid Lyngstad)について。赤毛の女性ですね。

ABBAスウェーデンのグループなんですが、彼女だけはノルウェー出身です。
そして母親はノルウェー人だけど、お父さんはドイツ人。
ウィキペディアにも書いてあるので知っている人も多いと思いますが、フリーダはノルウェーが占領されていたときに(1940-45)、ドイツ人兵士と現地人の間にできた子供です(生まれたのは戦後)。

しかも、恋愛とか "現地の女の子に手を出した" というものとはちょっと違います。当時のドイツ兵は、占領地ノルウェーの女性と懇ろになって子供を作るよう奨励されていました。
つまり、ナチスドイツの人口政策の一環であり、半ば命令のようなものだったわけですね。

その結果生まれてくる子供は、私生児であっても、大切に育てられました。実際、フリーダのお父さんであるドイツ兵も母国に妻子がいたそうです。
母子のための施設もノルウェー国内の各地に整備され、安全にまた秘密裡に出産し育児をすることができました。
そのようにして生まれた約12,000人の子供達の大半は、施設の理想的な環境で優良児として育てられたのです、しばらくの間は。

そして、ドイツが負けます。
ヨーロッパ各地でナチスドイツの協力者は酷い目に遭いましたが、ノルウェーでもドイツ人と付き合っていた女性とその子供達は、国民的憎悪の対象となりました。
ただ違ったのは、そういう女性たちを強制的に収容所に入れたことです。政府主導でそのようなことをしたのは、ノルウェーだけだったそうです。

そして、残された子供達は優良児から一転して厄介者になりました。処遇に困った政府は、精神科医が「知的障害の疑いがある」と "診断" したこともあり、子供達を知的障害施設に入れてしまいます。
このようにして彼らは一般社会から隔離されました。施設内では様々な虐待もあったようで、後で問題になります。

 

この過酷な状況でフリーダの家族はどうしたか?

 

スウェーデンに逃げました。その後、お母さんは若くして亡くなってしまったので、フリーダは祖母に育てられます。そして、歌手になり大スターの道を歩みます。

彼女は「お父さんは死んだ」と聞かされていたので、ずっとそう思い込んでいたようですが、ダンシング・クイーンを出して世界的に大ブレイクした翌年の1977年、お父さんがまだ生きていることが分かり、ストックホルムで初めて面会します。

以下のドキュメンタリー番組は、その経緯についてレポートしています。

 

 

ノルウェーに残って戦後迫害された子供達は国家賠償を求めました。しかし、ノルウェー政府はなかなか受け入れず、漸く認められたのが2004年。一方、フリーダは超大物スターとして活躍した上、何度か結婚を繰り返して今は公子夫人。
明暗が分かれる、とはよく言いますが、ここまでコントラストが強烈だと目眩がしますね。

上のドキュメンタリー番組は一連の経緯がよくまとめられていると思います。
ただ、「この出生の秘密がフリーダの心に影を落とした」というトーンを強調し過ぎていて、若干違和感を感じます。

もちろん複雑な心境であったのは確かでしょう。でも、彼女はスウェーデンに移住した後もノルウェーの親戚の家に遊びに行ったりしてるんですよね。
ABBAのメンバーになってからもノルウェーでツアーしたりして人気あるし。

だから、終戦直後のノルウェーの "国民的感情" はかなり早期に終息していたのではないか、と想像します。

それにもかかわらず、精神医学が政府の "公式な迫害" お墨付きを与えてしまったため、いたずらに問題が長期化して拗れた、ということなのではないでしょうか。

 

ライブドアブログ・ランキング国際政治・軍事分野で1位!

(初出:ゴリ押し北欧 Watch 2017年5月21日

 

ライブドアブログ時代のことです)

5月20日ライブドアブログ・ランキングの国際政治・軍事分野で1位、また政治(総合)分野で3位になりました。(でも、翌日はもう落ちてしまいました)

 

かりそめとはいえ、有難うございました。

うれしくなって、ブログを書いてしまいました。

 

 

スウェーデンの自虐史観

(初出:ゴリ押し北欧 Watch 2017年5月16日

 

2月にスウェーデンで移民による大きな事件があったかのような発言をしたっトランプ大統領の一件は、先日取り上げました

その後、スウェーデン当局がそれを否定し、否定したとたんに移民の暴動が起こり、また、4月にはストックホルムでトラックテロが起きるなど、傍から見ているとわけがわからない状態になっています。

 

このような状況で、スウェーデン政府の対応に不満な人は国内にいないのかなぁ、と思ってネットを検索してみたら、あっさり見つかりました。

以下の動画の製作者である Angry Foreigner 氏は、自身も戦争難民としてスウェーデンにやって来た移民ですが、現在のスウェーデンの移民政策を厳しく批判しています。

 

 

レイシストが悪い」という文脈で全てのことが解釈されるのが今のスウェーデンだ、と彼は熱弁していますが、私がまずびっくりしたのは、以下のような政治家の発言ですね。

 

 

Fredlrik Reinfeldt (前首相)

この国は、何世代もここで暮らしてきた人たちのものだろうか?それとも、人生の途中でここにやって来た人たちが作り上げるものだろうか?後者であることは明白だ。開かれた社会こそ強くなる。

 

スウェーデンとは本質的に野蛮である。見るべきものがあるとすれば、それは全て移民の方々のおかげであり、スウェーデン人は抑圧と狂気に加担しているだけ。

 

 

Mona Sahlin (社会民主労働党元党首)

スウェーデン人には文化も歴史もアイデンティティーもありません。そういうものを持っているのは移民の人たちです。スウェーデン人は「新しいスウェーデン」に適応しなければなりません。

 

 

いやー、お見事!鳩山さんが聞いたら涎を垂らして喜びそうな友愛ぶりですね。

 

こういう反スウェーデン思想っていうのはどこから来るんでしょうか?さっぱりわかりません。

とにかく、このような自己否定の帰結として移民が礼賛されているわけですが、結果としてカオスな状況を作りだしています。犯罪や暴動はもちろん、以下のような「不条理」が起こっているとのこと。

*移民の街 Malmo では、中東からやって来た移民によるヘイト・クライムのため、ユダヤ人が逃げ出している。

*女性上司が部下の男性移民に握手を求めたところ、「女性との握手は宗教で禁じられているのに強制された」として、人種差別法廷に訴えられた。

レバノンで殺人を犯したアラブ人が、牢屋に入るのが嫌なので亡命を求めた。レバノンで非人道的な扱いを受ける恐れがあるから、という理由でスウェーデンの移民法廷は許可した。

 

今回は、 Angry Foreigner氏の動画の要約というかたちになってしまいましたが、こういう無理な自虐史観と移民礼賛が本当に蔓延しているとしたら、移民犯罪の隠ぺいや統計の誤魔化しが誘発されてもおかしくありません。
実際、上の「握手の件」は、地方の政治家が金で解決したそうですしね。

学生に生活費を支給する一方で、学科はリストラするデンマーク

(初出:ゴリ押し北欧 Watch 2017年5月6日

 

エスキモー学(Eskimology)という学問を聞いたことがありますか?
私はつい最近知りました。

どんなことをしているかと言うと、読んで字のごとく、エスキモーについての研究をしています。
(今は、Eskimo ではなく、Inuit と言う言葉を使うようになっていますが、エスキモー学はいまだに Eskimology と呼ばれているとのこと)

コペンハーゲン大学には世界で唯一のエスキモー学科があります。100年の歴史があるそうですが、下のBBCの報道によると、もう学生は募集しないとのこと。
つまり、学科そのものがリストラされます。残念ですね。

 


これから、北極の氷が融けて、開発とか始まったら必要なんじゃないのかなぁ、もったいない。
まぁ、デンマークは予算が厳しくて、研究者や弱小学科は結構リストラされてるみたいです。だから、仕方ないんですかね。

 


ただ、ひとつ気になることがあります。
以前も書きましたがデンマークって学費が無料であることに加えて、学生に毎月10万円とか生活費払ってるんですよね。これを先になんとかするべきなのでは?

 


学費は取らず、加えて学生に生活費まで支給しておきながら、学科を廃止して研究者はクビにするって、絵に描いたようなちぐはぐさ。
お金の使い方間違ってますよね?これでは学問の発展や振興は望めません。
学生はデモとかしてうるさいから、おとなしいところから削るってことでしょうか。

生活費支給を辞めれば、否、半額にするだけでも、かなりの学問を救えたんじゃなかろうか。研究者にはしっかり研究してもらって、その成果を広く発表してもらった方が社会全体のためになると思うのですが。

 

愛国心や経済危機が出生率を上げた? - アイスランド

(初出:ゴリ押し北欧 Watch 2017年5月6日

 

出生率が歴史的に低いレベルまで下がったフィンランドの育児政策を「少子化対策」として報じたNHKのトンマな番組については先日書きましたが、今回は子供が増えたという話です。

昨年(2016年)6月に行われたUEFA欧州選手権で、初出場のアイスランドが強豪イングランドを 2-1 で倒し、サッカーファンを大いに沸かせました。
その大金星の日から9か月目に当たる今年3月、レイキャビックの大学病院で多くの硬膜外麻酔が使用された、と英紙 Telegraph が伝えています。

 


 (日本語版はこちら

 

つまり、分娩の際妊婦に投与される麻酔薬が大量に使われたから子供がたくさん生まれているだろう、という話ですね。

初出場でイングランドに勝つなんて確かにすごいですよね。勝利の夜は「アイスランドすごい!俺たちすごい!」とさぞかし盛り上がったことでしょう。これで本当にベビーブームになったら、愛国心で子供が増えた、と言えるかもしれません。
(Telegraphの記事は「子供が生まれた」とはっきり書いていないのがちょっと不安ですが。)

 

次は経済危機。

 

アイスランドが2008年のリーマンショックの影響で経済危機に陥ったことはご存知だと思いますが、その10か月後にベビーブームが起きていたそうです。

 

経済崩壊から十月十日:アイスランドはベビーブーム!

 

また、2012年末時点でこんな証言がありました。日本人にとってはよだれが出そうな情景。

 


ただ、本当に経済危機がきっかけになったかというと、経済危機になる前からベビーブームだったという話もあるので検証が必要です。

このアイスランドのケースだけで、愛国心や経済危機が子供を増やした、と決めつけることはできません。でも、このような子供が増えたというケースこそ、議論や検証の価値があるというものです。
なにも出生率の下がっている国の育児支援策を持ってくることないじゃないですか。

それとも、「愛国心出生率を上げた」なんて "危険思想" はNHKでは放送できませんか?

 

大使館が否定してるのに、フェイク情報を拡散する先生たち その2

(初出:ゴリ押し北欧 Watch 2017年5月1日

 

(「大使館が否定しているのにフェイク情報を拡散する先生たち その1」より続く)

まず、九九の暗記について。

 


それから、宿題について、

 


フェイク情報を鵜呑みにしてどんどん自論を展開させてしまうところが、哀しいやら恐ろしいやら。このような人が複数集まって議論したりすると、フェイクニュースが猛スピードで既成事実化していくんですよね。気を付けましょう。

次は、科目教育の全廃について、

 


(ツイートを削除してしまったようです。以下はスクショ)

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苫野氏の削除ツイート




また一人(New!)

 


(この方はアカウントごとなくなっています。以下はスクショ)

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George Kumazawa 削除ツイート





学生に、「注目→」とかいう前に少しは「調べ学習」しましょうよ。それが仕事なんだし・・・。

以下の人は、教育専門のライターの方で、先生ではありませんが、目の覚めるような見事な「鵜呑み」だったので紹介します。

 


感激する前にファクトチェックしましょうね!

 

このフェイクニュースを拡散するのに一番力を入れているのが宮台真司先生です。
これはもともと欧米のメディア発なので、宮台先生は以下のように英語でツィートしているのですが、

 


この同じ内容のフェイクニュースを何度も何度もツイートしてるんですよね、上にあるのはそのうちの一つ。

あまりにも執拗にツイートしているので、何か目的があってわざとデマを広めようとしているのかと思ってしまいました。

でも、どうやらそうではないようです。
というのも、この人、あのくだらないBBCのフェイクもツイートしてるんですね。

 


こんな記事、ちょっと読んだら胡散臭いってすぐわかるでしょ。それでも、「BBC+フィンランド」のブランド力でコロッと騙されちゃう。それで浮かれてツイートしてしまったのでしょう、きっと。

もうチョロ過ぎ。

知識人とか有識者とか言われる人に特に何も期待していませんが、ここまでチョロいとは予想できませんでした。

大使館が否定してるのに、フェイク情報を拡散する先生たち その1

(初出:ゴリ押し北欧 Watch 2017年5月1日

 

以前、NHK発のフェイクニュースを取り上げて、北欧ブランドがいかに使いまわされているかを書きました。

使いまわされていると言っても、メディアに取り上げられるのは基本的に歓迎すべきことですよね。「日本の○○に学べ」なんて言われれば、私たちもうれしいです。
宣伝してくれて、好感度が上がるなら、多少の間違いに目をつぶることもあるでしょう。

しかし、やはり限度はあります。
アイドルじゃあるまいし、勝手な願望や幻想をいちいち押し付けられたら、うんざりしますよ。
フィンランドの場合、そういう耐え難いレベルまで行っているのかもしれません。

ということで、昨年(2016)の夏、フィンランド大使館は「フィンランドの学校がこう変わる!Q&A10選」というお知らせを出して、フェイクニュース対策に乗り出しました。(魚拓

finlandabroad.fi

そのお知らせが否定しているのは主に以下のような情報です。

「科目教科」が全廃   ← ウソ
「宿題を廃止した」(マイケル・ムーア)  ← ウソ
「九九を暗記しない」(シェーン・スノウ)  ← ウソ

要するに、フィンランドの学校では、科目教科はこれまで通り存続するし、宿題もあれば、九九の暗記もする、ということですね。おまけに試験の必要性まで説いています。

ところが、依然としてフェイク情報を鵜呑みにする先生がけっこういるんですよね。しかも「教育の専門家」に多い。
中には、よせばいいのに、積極的に拡散する人もいたので以下に報告します。

(その2に続く)

yasemete.hatenablog.com